聖書的資産運用

人生100年時代と言われます。年金制度は大丈夫か…。老後の備えは十分か…。クリスチャンでも、退職後の生活に不安を感じるものです。

経済状況の変化や物価の高騰は、年金世帯の家計に大きな影響を与えます。病気になったとき、介護が必要なときに、十分な経済的な蓄えを持てるように、私たちは確実な金融商品に投資をし、貯蓄に励みます。

その一方で、この世界が提供する社会保障では、私たちの老後を完全に保証することはできません。もちろん、老後のために賢く貯蓄することは大切なことです。同時に資産を持つと、逆に資産残高や、為替相場、株価や配当、収入に対して、かえってストレスになることもあります。

私たちの経済的な必要を完全に満たしてくれるのは、神だけです。老後の必要も、神が完全に満たしてくれることに信頼する必要があるのです。

では、経済的な必要に関して、私たちはどのように神を信頼したら良いのでしょうか。経済面で神への信頼を深めるための具体的な提案をお伝えします。

1.神は信頼できる方

詩篇にはこう書かれています。「主のことばは 混じり気のないことば。土の炉で七度試され、純化された銀。」※1

天と地を創造し、宇宙を運行する神は、この世界のすべてを所有しています。神は私たちが想像する以上に、経済的な必要を満たすことができるお方です。私たちはただ、神の約束に信頼すれば良いのです。

箴言にはこうあります。「心を尽くして主に拠り頼め。自分の悟りに頼るな。あなたの行く道すべてにおいて、主を知れ。主があなたの進む道をまっすぐにされる。」※2

神ご自身と聖書の約束が、経済的な安定の基盤です。この聖書の約束に信頼してください。

2.充実した人生

今の経済状況に左右されず、聖書のことばに従うクリスチャンに、神は溢れるほどの喜びを与えると約束しています。

イエスはこう約束しています。「わたしが来たのは、羊たちがいのちを得るため、それも豊かに得るためです。」 ※3 このイエスの約束には、経済的な祝福も含まれます。

3.恐れを信仰に置き換える

恐れが信仰を失わせます。恐れが経済的な不安へと導くのです。将来に不安を感じるとき、神に委ねることが難しくなります。

しかし、神のみこころに従うならば、信仰が確立します。神への信頼こそが、神の豊かな祝福を受ける鍵です。

使徒パウロはこう語ります。「神は私たちに、臆病の霊ではなく、力と愛と慎み(思慮分別)の霊を与えてくださいました。」※4

どうか恐れの心を捨て、あなたの将来を神の力強い御手に委ねてください。聖書のことばの原則を実行してください。そのとき、経済的な不安から解放されます。

4.経済的必要のためにも祈る

使徒ヤコブはこう語ります。「あなたがたが、欲しても自分のものにならないと、人殺しをします。熱望しても手に入れることができないと、争ったり戦ったりします。自分のものにならないのは、あなたがたが求めないからです。」※5

イエスはこうも約束しています。「あなたがたがわたしにとどまり、わたしのことばがあなたがたにとどまっているなら、何でも欲しいものを求めなさい。そうすれば、それはかなえられます。」※6

信仰には行動が伴います。必要なものを与えてくれるように、神に願いましょう。神があなたの必要を満たすことを、信仰によって期待しましょう。神のみこころと同じ祈りをするなら、神はその祈りに必ず答えると聖書は約束しています。※7

5.心の動機をきよく保つ

経済面で神に信頼するためには、心の動機が純粋なものでなければなりません。たとえ信仰によって祈ったとしても、動機が間違っていれば、その祈りは答えられません。

使徒ヤコブはこう語っています。「求めても得られないのは、自分の快楽のために使おうと、悪い動機で求めるからです。」※8

神が喜ばない動機が心に忍び込んできたら、「霊的呼吸」をすることをお勧めします。そして、聖霊の力によって、あなたの祈りに答える神に信頼してください。

霊的呼吸については『神の愛とゆるしを体験するには』をお読みください。

6.信仰の一歩を踏み出す

神はときに、私たちが信仰の一歩を踏み出すことをチェレンジすることがあります。カナダの有名な伝道者であり、牧師であるオズワルド・J・スミス博士は「世界宣教によって、神の救いの恵みにお返しをする」必要に対して、熱い情熱を持っていました。

スミス博士が牧会するトロントのピープルズ・チャーチでは、このビジョンが活動の中心に据えられていました。毎年1ヶ月間にわたって開催される「世界宣教特別月間」は、このビジョンの表れでした。

世界宣教のために献金をささげることは、子どもも大人も、会社員も大富豪も、主婦も年金受給世帯も、すべての人にとっての最大の責務だと、スミス博士は語っています。

約束献金

毎年、スミス博士は「約束献金」を決めるように、信徒たちに語っていました。「約束献金」で決めた額が、当初自分で考えた献金額よりも高額であっても、神は必ずそれ以上の経済的祝福で満たしてくれることを、博士は語りました。

また、スミス博士は教会維持のためにささげる通常の献金よりも、外部にささげる宣教献金に多くの金額をささげるようにと、信徒たちをチャレンジしました。その結果、何千万ドルもの献金が集まり、宣教師にささげられました。

「約束献金」とは、支払わなければならない「誓約」ではありません。むしろ神に対するあなたの自発的な約束なのです。

たとえ、自分の経済力では献金ができないと感じても、思い切って信仰によって、神にささげてみてください。神は実際に、あなたの信仰に答え、あなたの必要を満たしてくれます。

今あるものをささげる

ここでもう一点、注意してほしいことがあります。約束献金の金額を決める前に、あなたが今、手元に持つ収入から献金をすることを惜しまないでください。あなたが今、所有する財産をどう使うかは、さらに多くの資産をあなたに委ねるべきかを測る、神の一種のテストなのです。

「約束献金」の概念は、聖書の中で明確に語られているものではありません。しかし聖書的な原則に基づいたものです。将来与えられる経済的な祝福を、神の国に投資する実践的な戦略です。

神への信仰が深まるにつれて、祈りながら信仰による約束献金をささげることを、決断してください。もしかすると約束献金の金額が、あなたの今の収入よりも大きなものかもしれません。しかし「神はご自身の無限の富から私たちの必要を満たしてくださる」※9 という聖書の約束を信じてください。

あなたの所属教会や、あなたの関わる宣教団体を通して、大宣教命令が達成されることを信じましょう。信頼をもって、寛容な心で「約束献金」の金額を決心しましょう。

信仰の一歩を踏み出すことで、あなたはご自分の人生を、愛と力と知恵に満ちた無限な神に結びつけることができます。神が、あなたの必要を無限に満たすことを体験するようになります。あなたは、世界を変える神の器となるのです。

宣教に対する神の優先順位

私はこの45年間、聖書のことばを学び、世界中の国々で奉仕してきました。その経験から、大宣教命令の成就に直接関わるクリスチャン個人と教会こそが、神の祝福を最大限に受けることを、私は確信しています。※10

私は、神がクリスチャンに与えた経済的祝福のうち、宣教のための献金額がいかに少ないかを知って、深い懸念の気持ちを持つほどです。

イエスは私たちに具体的な命令を与えています。「ですから、あなたがたは行って、あらゆる国の人々を弟子としなさい。父、子、聖霊の名において彼らにバプテスマを授け、わたしがあなたがたに命じておいた、すべてのことを守るように教えなさい。見よ。わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたとともにいます。」※11

クリスチャンには、神の国を建て上げるうえで必要な経済的祝福が与えられています。しかし多くのクリスチャンがまだ、経済面でこの大宣教命令に従ってはいないのです。

必要を認識する

オズワルド・スミス博士はこう語ります。「男性10人が重い丸太を運んでいるとします。10人のうち9人が一方の端っこを担っています。もう一方の端っこはたった1人が背負っています。この光景を客観的に見ると、あなたが助けるべきなのはどちらですか。当然、1人が丸太を抱える側です。」

この光景は、すでに福音が行き渡っている国での福音宣教に、献金の多くが使われている現実を表しています。

例えば、アメリカの国内総生産の68.5%が個人消費にまわされます。

この膨大な資金のうち、どれだけの金額が世界宣教のためにささげていることでしょう。答えはわずか0.5%に過ぎません。考えてみてください。100ドルに対して50セントしか、世界宣教のために用いられていないのです。

例えば文書伝道では、キリスト教書籍や出版物のうち、非キリスト教国にはわずか1%しか届けられていません。放送伝道においては、福音ラジオやテレビ、動画制作の99%が、アメリカ国内用です。

北米の教会の予算は、その95%が国内伝道のために用いられています。残る4.5%が、すでに福音が届いている地域での伝道に使われています。福音未伝の宣教の前線には、献金総額のわずか0.5%しか届けられていません。

この現実に、神はどれほど悲しんでいることでしょう。世界の至る所で大宣教命令が成就されるというイエスの命令に従っていきましょう。世界各地の福音が必要とされる地域に届いていくときに、教会もクリスチャン個人も、神の最大限の祝福を得ることができるはずです。

世界宣教にささげる

多くの教会が、全予算の10%すら世界宣教のためにささげていない現実に、神はどれほど悲しんでいることでしょう。私の個人的な信仰ではありますが、すべての教会が、年間予算の25%から50%を、世界の福音未伝地の伝道のためにささげることを、私は祈っています。

例えば、トロントのピープルズ教会やアラバマ州バーミンガムのブライアーウッド長老教会では、世界宣教のために、少なくとも教会会計の50%をささげています。

もし個人のクリスチャンや教会が、福音宣教で最も必要とされる働きに献金をしていたら、世界がどのように変わるのかを想像してみてください。

世界宣教への献金によって、まだ福音を聞いたことのない人々に、聖書のことばを届けることができます。優れた福音文書や、訓練教材を届けることもできます。衛星放送やインターネット、SNSによって、宣教に門戸を閉ざす国に福音を届けることもできます。

皆さんの教会の宣教予算を調べてみてください。世界宣教のために増額が可能かどうか、教会予算を確認してみましょう。まだ聞いたことがない人々に福音を届ける「宣教のプロジェクト」を探して、献金してください。

この福音を地上のすべての人々に伝えるために、あなたの信仰と従順を、神が用いてくださることを期待してください。

私たち夫婦の献身

私と妻のヴォネットは、1951年に「イエスを第一にする」という特別な誓約に署名しました。

その頃、私は会社の経営をしていました。仕事の合間、神学大学院にも通っていました。また、ハリウッド第一長老教会の執事もしていました。

しかし私たち夫婦は、キリストに献身することこそが人生最大の目的であると確信していました。ある夜、夫婦で主イエスとの間に契約書を書き、著名しました。その契約とは、私の人生とすべての財産を、神に委ねるという決断でした。

今日、私たち家族は個人的な資産はほとんど持っていません。私たち自身も宣教師です。私たちの団体の同僚スタッフと同様に、心ある支援者の方々の献金によって、日々の必要が与えられています。

数週間分の生活費が銀行口座に入っていることは、めったにありません。働き全体の必要を満たすのに十分な金額が手元にないことがほとんどです。いつも経済的には自転車操業です。

しかし神に信頼して従うミニストリー・パートナーの方々の支援により、私たちは神の祝福を楽しんできました。私たちは銀行の預金額以上に、むしろ神が私たちの必要を満たしてくれることを信頼してきました。

冒険に満ちた人生

今でも私と妻は、経済的にも冒険の人生を歩んでいます。それは1946年、私が大学生のためのカンファレンスに参加したときから始まりました。そのカンファレンスで、オズワルド・スミス博士が約1000人の大学生の前で、大宣教命令のために人生をささげるように説教をしました。博士のメッセージを聞いたときから、私の経済的冒険が始まりました。

博士は、参加者の一人ひとりに、祈りの中で一つの国を選ぶように勧めました。自分で選んだ国のために祈り、献金をするようにと、博士はチャレンジしたのです。そして神の召しがあれば、宣教師となって、その国に行くように語りました。私は当時まだ共産圏だったロシアを選び、ロシアのために祈り始めました。

のちに、私はヴォネットと結婚しました。結婚後、私のロシアのための祈りに、ヴォネットも加わりました。その後、私たちの団体のスタッフがロシアにも入り、ロシアの人々に福音を伝え、すばらしい成果を上げています。現在も、かつてのソ連邦の国々で、何千人もの牧師や信徒の訓練が行われています。

祈りの答え

数ヶ月前、ロシアのクリスチャンのリーダーが、キャンパス・クルセードの国際本部の私の部屋を訪ね、モスクワに「ニューライフ訓練センター」を設立したいというビジョンを語りました。以来、私の心の中に宣教への情熱が湧き始めました。

「私の退職金を使って、訓練センター設立を支援することはできないか?」と考えるようになりました。

ロシアの人々のために長年祈り続け、ロシアを何度も訪問しました。ロシアの人々に対する特別な愛と重荷が、私の心にあったのです。私の年金が、何千人もの人々にイエス・キリストの福音を伝える貴重な機会になるかもしれません。

私の退職金の総額がいくらになるのか、その時点では私も知りませんでした。しかし私は訓練センターのために献金する計画を、喜びをもって検討するようになりました。

まずは妻のヴォネットに相談しました。私たちの退職金をささげるように神が導いているように、私が感じていることを伝えました。私は妻の老後の心配にも耳を傾け、率直に話し合いました。話し合いのあと、ヴォネットも私の計画に賛同してくれました。私たちは祈り、私たちの老後の必要も、神が備えてくれると信じることにしました。

私は、自分の退職金の積み立てがいくらになるのかを、会計部門に確認しました。驚いたことに、最初の一年間の訓練センターの運営資金5万ドルと、ほぼ同額の退職金を受給することになっていたのです。

私の退職金を使って、何千人もの人々に福音を伝えることができると思うと、私はこの神の偉大なみわざに興奮を覚えます。

現在の計画では、モスクワ大学の校内に「ニューライフ訓練センター」を設立する予定です。大宣教命令成就のために、私の時間、才能、財産をささげることができる特権を、神に感謝しています。

あなたにできること

この世代に大宣教命令が成就するために、あなたにできることは何でしょうか。自分の時間、才能、財産を惜しみなくささげる人々を、神は特別に祝福します。

退職金をささげるように、神が導くことは稀なことかもしれません。また、私は皆さんに自分の退職金をささげるようにと、勧めているのでもありません。神は、私たち一人ひとりに特別な計画を持ち、私たちの人生を導きたいと願っています。

私と妻のヴォネットは、ただ神の特別な呼びかけに応答しただけです。神の栄光のために最大限の祝福と収穫を得るために、ぜひ神の特別な導きに従ってください。神の計画を、ご自分の人生の計画にしてください。

神の国のために、あなたの財産を賢く投資してください。福音の収穫のため、あなたの個人的な献金の計画を立てることをお勧めします。

あなたの財産の源であり、財産すべての所有者である方は神です。あなたは神の財産の管理を一時的に委ねられているだけです。今、委ねられた資産の運用計画を提出するときです。

あなたの献金を、礼拝の行為として、神にささげましょう。神を第一として、自分の時間、才能、財産を効果的に管理してください。そして、天に豊かな富を蓄えることで、神の御名に最大限の栄光を返しましょう。そのとき、あなたも信仰によって献金をするというすばらしい冒険の人生を体験することができるのです。

[著者紹介]ビル・ブライト(1921-2003年)実業家であり、フラー神学大学院の大学院生であったビル・ブライトは、将来社会を導くリーダーに福音を届けるビジョンをもって、妻のヴォネットとカルフォルニア大学ロサンゼルス校で伝道を開始。このムーブメントが全米、世界各国に広がった。ビルとヴォネットは、国際キャンパス・クルセード・フォー・クライストの創設者であり、長年総裁を務めた。多くの著書、小冊子が多数ある。本稿はビル・ブライト博士のメッセージ “How You Can Experience the Joy of Giving”の日本語短縮版。

脚注: (1) 詩篇12:6 (2) 箴言3:5,6 (3) ヨハネ10:10 (4) 2テモテ1:7 (5) ヤコブ4:2 (6) ヨハネ15:7 (7) 1ヨハネ5:14 (8) ヤコブ4:3 (9) ピリピ4:19 (10) ヨハネ14:21-24 (11) マタイ28:19,20

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『月定献金とは何ですか?』
『献金の聖書的意味』
『神の御国に投資する』

聖書:新改訳聖書2017©️2017新日本聖書刊行会


●個人学習のために

1.あなたの資産を管理する上で、神に完全にゆだねることができていないものはありますか。もしあれば、神にゆだねることを妨げている根本的な理由は何だと思いますか。

2.あなたの時間や賜物、才能の十分の一は具体的にはどれくらいでしょうか。時間や才能を神のためにささげるために、毎週のスケジュールで見直すべきところはありますか。

3.1ヨハネ2:15-17を読んで、自分のことばで書き直してください。この箇所はあなたのスチュワードシップ(管理能力)とどう関連がありますか。


●グループ・ディスカッションのための質問

1.物質的にも、また時間や才能面でも、神があなたに豊かに与えてくれたものを、あなたはどのように人々と分かち合うことができますか。具体的に分かち合う方法を考えて、グループで分かち合ってください。

2.クリスチャンになって間もない人が「献金することに不安を感じている」と話したとします。あなたはどうアドバイスしますか。


●『伝わる概念』シリーズ
生き生きとしたクリスチャンとして、以下の概念をまず自分のものとして、次の人に伝えてあげてください。

1. イエスの独自性
2. クリスチャンである確信を持つためには
3. 神の愛とゆるしを体験するには
4.聖霊に満たされるには
5. 聖霊に満たされて歩むには
6. 伝道で実を結ぶには
7. イエスを友だちに紹介するには
8. 大宣教命令を成就するには
9. 信仰によって愛するには
10. 確信をもって祈るには
11. 献金の聖書的意義
11. 神の御国に投資する
11. 聖書的資産運用(本稿)